食道皮脂腺 (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

esophageal sebaceous gland

食道皮脂腺は,異所性の皮脂腺である.

通常,異所性皮脂腺は外胚葉系由来のため,口腔,口唇に黄色の顆粒として認められるが,内胚葉由来の食道粘膜に認められることはまれとされてきた.

しかし,内視鏡機器や診断技術の向上により,必ずしも,まれな疾患ではなくなりつつある1)

De La Pavaら2)が,1962年に初めて食道皮脂腺に関して,剖検例で200例中4例に病理組織による皮脂腺を確認している.

Ramakrishnanら3)により,1978年に初めて内視鏡所見による報告がされた.

また西崎ら4)は自験例を含む66例について集計し,男性に多く,大部分の症例で大きさは5mm以下で単発例に比して多発例が多く,

中部食道に多く,発生頻度は約0.1%であったとしている.

食道皮脂腺の内視鏡所見の特徴として,山口ら5)は,小さな黄白色調の扁平隆起や顆粒状集簇像を呈し敷石状や花弁状を示し(腺房部分),

その中心部や頂部に白色の小突起(導管部分)を認めるとしている(Fig. 1)

Fig. 1 食道皮脂腺の内視鏡所見.散在性に黄白色調の扁平隆起を認め,特徴的な花弁状(菊花状)を呈する.中心部の頂部には導管開口部の小突起を認める.
Fig. 1 食道皮脂腺の内視鏡所見.散在性に黄白色調の扁平隆起を認め,特徴的な花弁状(菊花状)を呈する.中心部の頂部には導管開口部の小突起を認める.

ヨード染色では,被覆上皮の菲薄化に伴い淡染所見を呈する.

NBI(narrow band imaging)観察では,小隆起に血管増生はないため,背景粘膜より白色調に観察される(Fig. 2)