食道胃接合部(esophagogastric junction ; EGJ)は食道と胃の境界であり,「胃癌取り扱い規約」1)では以下のように定義されている.
・内視鏡検査における食道下部の柵状血管の下端.
・上部消化管造影検査におけるHis角を胃壁に沿って延長した線.
・内視鏡および上部消化管造影検査における胃大彎の縦走襞の口側終末部.
・切除標本の肉眼的観察では周径の変わる部位.
また,EGJの上下2cmの部位を食道胃接合部領域と定義しているが,「食道癌取扱い規約」2)では,その理由を以下の様に解説している.「食道胃接合部領域の癌は胸部下部食道癌あるいは胃上部癌と異なるリンパ節転移様式をとり,手術術式,特に切除郭清において特殊な配慮を要するので,この領域を独立させることとした」.
「食道癌取扱い規約」,「胃癌取扱い規約」では食道胃接合部癌の定義に西の分類3)を用いている.すなわち,「病理組織型にかかわらず,食道胃接合部の上下2cm以内に癌腫の中心があるものを食道胃接合部癌」と定義している(Fig. 1).
一方,欧米では食道胃接合部から食道側1cm,胃側2cmに癌の中心をおく腺癌を噴門部癌とするSiewertらの分類4)が用いられている.この分類ではFig. 2に示すようにEGJから1cm食道側,2cm胃側に腫瘍中心がある場合を2型とし,これより口側を1型,肛門側を3型と定義している.