定義(Fig. 1)
世界で議論が多くなされ,日本と欧米とでは異なった定義がされている.
なお,食道胃接合部(esophagogastric junction ; EGJ)の定義は「食道胃接合部の分類」の項を参照(855頁).
1)Siewert分類1)
Type 1 : 腫瘍中心の位置がEGJから1cm以上離れた食道側の腺癌,
Type 2 : 腫瘍の中心がEGJの食道側1cm,胃側2cm以内に癌の中心がある腺癌,
Type 3 : 腫瘍の中心が胃側に2cm以上5cm以内の腺癌に分類されている.
このうちType 2を狭義のEGJ腺癌と定義している.
Type 1の多くはLSBE(long segment Barrett’s esophagus)に発生した癌で,Type 3は胃体上部の癌(subcardiac cancer)に相当する.
2)UICC分類2)
2010年の第7版で,癌の中心が食道胃接合部腺癌から胃側5cm以内にあり,食道浸潤を来した腺癌を食道胃接合部腺癌と定義している.
この定義に従えば,胃体部の通常型胃癌も含まれることになり,
癌の背景粘膜,組織型,リンパ節転移部位など多くの点で食道胃接合部腺癌の特性が見失われることになるので臨床的,病理学的に大きな問題がある.
また,食道浸潤がなければ胃癌として扱われ,食道浸潤の有無によりその取り扱いが異なるなどの問題もある.
3)日本の食道癌,胃癌取扱い規約3)
食道胃接合部腺癌の定義はSiewert分類Type 2にほぼ相当するが,“EGJの上下2cm以内に癌の中心がある”ものとされた(Fig. 1).
頻度
徐々に増加する傾向が指摘されている.
病理学的特性
日本の取扱い規約によるEGJ腺癌とSiewert分類Type 2腺癌は癌の中心が胃側では2cm以内とされ,
この部位はほぼ胃噴門腺粘膜領域である.
また,食道側の2cm以内に中心がある腺癌にはこの噴門腺癌とそれが食道に浸潤したものとBarrett腺癌の一部が含まれる(Fig. 2, 3).
このほかに頻度は低いが非Barrett食道に発生した腺癌がある4).