粘膜下腫瘍(SMT)様の形態を呈する癌  丸山 保彦(藤枝市立総合病院 消化器内科)

 

【概念・概略】

胃癌は上皮性腫瘍であるが、時に粘膜下腫瘍(submucosal tumor;SMT)様の形態をとることがある。

診断には粘膜下腫瘍との形態的な違いやSMT様の形態をとる腫瘍の種類や特徴を知っておく必要がある。

 

 

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粘膜下腫瘍様の上皮性病変は病理学的にどのようなものがあるかを①腫瘍性病変、②非腫瘍性病変、とに分けて列挙する(Fig.1)。

Fig1

Fig.1 粘膜下腫瘍様の上皮性病変の病理学的分類

 

 

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【内視鏡的診断と粘膜下腫瘍との鑑別】

(内視鏡的診断と粘膜下腫瘍との鑑別)

SMTと比較すると上皮性腫瘍の要素として注目する所見を

「3+1」(①②③+④)で説明する(Fig.2)。

Fig2

Fig.2 粘膜下腫瘍様所見をもつ上皮性病変の内視鏡的特徴所見

 

① 隆起について(Fig.3, 4)

小さいが明瞭な立ち上がりで、 隆起表面が多結節状の凹凸変化を呈する。

基部がいびつで、 大きくなると台形隆起をとりやすい。

Fig3 

Fig.3 隆起

Fig4 

Fig.4 隆起

 

② 隆起頂部の陥凹について(Fig.5)

SMT様隆起が2cm以下であるにもかかわらず陥凹がある。

陥凹の形が不整形・浅いびらん様を呈する。

隆起に対する陥凹部の相対面積比が大きく、中心から偏在している。

(注:面積比はDelleを伴うSMT<SMT様の上皮性腫瘍<ML)

 Fig5

Fig.5 隆起頂部の陥凹

 

③ 隆起周囲について(Fig.6, 7)

〇ひだの走行が、SMTではbridging fold、上皮性腫瘍では陥凹辺縁までせり上がる。

〇低分化型腺癌が粘膜中層を這う場合、褪色調となる。

〇背景粘膜は、粘膜下異所腺(submucosal heterotopia of the gastric glands;SHG)が多発しているか、A型胃炎の逆萎縮がないかなど。

〇食道癌、膵癌や肝細胞癌等の多臓器からの浸潤する可能性がある部位かを考慮に入れる。

〇低異型度(超)高分化型腺癌の場合には通常観察では周囲粘膜と隆起粘膜との差が出にくく、拡大所見を参考にする。

Fig6 

Fig.6 隆起周囲

Fig7 

Fig.7 隆起周囲

 

④ 経過(Fig.8)

〇上皮性腫瘍では悪性サイクルを呈する場合がある(SMTのdelleは瘢痕化することは少なく鑑別点となる)。

Fig8 

Fig.8 経過

 

 

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(各粘膜下腫瘍を呈する腫瘍の特徴)

SMT様の上皮性腫瘍には組織型により、隆起や陥凹、周囲所見、発生部位にそれぞれ特徴があり、これらを知っておくことである程度鑑別疾患を絞り込むことが可能となる。

以下に例を示す。

〇癌巣周辺に限局した線維化による隆起は硬い。

〇mucでは柔らかく表面に粘液が付着。

〇lymphoid stromaを伴う低分化型腺癌は胃体上部に好発。

〇粘膜下異所腺(submucosal heterotopic gastric gland;SHG)由来癌では隆起が多発し、開口部では粘液+乳頭状粘膜。

〇転移性胃癌は多発しやすくbull's eye様。

〇胃底腺型胃癌の初期像はH.pylori (Helicobacter pylori) 陰性の萎縮のない背景粘膜に褪色調の小SMT様。

 

 

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 Fig9

Fig.9 粘膜下腫瘍様胃癌の内視鏡的特徴所見

 

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