食道裂孔ヘルニア  佐藤千晃(東北大学大学院医学系研究科 先進外科分野)

【概念・概略】

食道裂孔から胃や腸管など腹腔内臓器の一部が脱出した状態のこと。

以下のの3つに分類される。95%以上が滑脱型とされる1)

Fig1

Fig.1 食道裂孔ヘルニアの3型。

 

 Fig.2a Fig2b   Fig2c
 a 反転像  b 見下ろし像

 c 見下ろし像

(GERDを伴う)

Fig.2 滑脱型の内視鏡像。  

 

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【成因】

特発性や先天的の場合もあるが、加齢により食道裂孔を形成する横隔膜脚(筋肉)が弛緩し発症することが多い。

肥満による腹腔内圧の上昇に伴い発症するともいわれ、欧米での食道裂孔ヘルニアの有病率は高い。

 

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【病態生理】

本来の逆流防止機構が機能しなくなることにより、逆流性食道炎(Gastroesophageal Reflux disease;GERD)が起こりやすくなる。

 

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【診断】

滑脱型には上部消化管内視鏡検査が有用であり、傍食道型や混合型にはCTや透視などの画像診断(Fig.3)が有効である。

Fig3

Fig.3 X線造影像、CT像。

upside-down stomach 食道裂孔ヘルニアからの胃の脱出の程度が高度で軸捻転を伴っているものを示す。

 

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【症状】

特に症状を感じない人もいるが、逆流性食道炎(GERD)の原因となり、それに伴い胸焼けや胸痛などの症状を有する場合がある。

また、げっぷや腹部膨満感、嚥下困難感などを訴える人もいる。

 

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【治療】

滑脱型の場合、症状がなく、GERDも来していない場合は、未治療でも問題はない。

GERDを来している場合は、H2 blockerやPPI(proton pump inhibitor)などの胃酸分泌抑制薬の投与を考慮する。

内服治療に抵抗性の場合は、噴門形成術(Nissen手術)などの適応になる。

 

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【予後】

滑脱型は予後に影響することはまずないが、QOL(quality of life:生活の質)には大きく影響する。

一方、重度の傍食道型は脱出した臓器が嵌頓した場合は、心機能や呼吸機能に影響し致死的になる可能性があるとされる。

 

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