患者さんに喜ばれる「大腸内視鏡挿入法」 
―その1 “すべては患者さんのために” 目的と心構えを確認しておこう 
村田 聡(ムラタ胃腸内視鏡クリニック)

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このコンテンツは、“すべては患者さんのために” をテーマに、質の高い大腸内視鏡検査(total colonoscopy : TCS)の普及をめざしパターン化された挿入法を作成・改良する勉強会である「二木会」とのコラボ企画です。

(「二木会」についての説明はこちらの連載トップページをご覧ください。)

 

第1回は「 目的と心構え」について、二木会 副塾長の村田聡先生(ムラタ胃腸内視鏡クリニック)にご解説いただきました。

初回は、どなたでもご覧いただけます!(第2回以降は、ログイン(新規会員登録がまだの方はご登録)のうえ、本コンテンツをご覧ください)

 

大腸癌死亡減少のために大腸内視鏡検査(total colonoscopy ; TCS)は必須であり、定期的な検査およびポリープ切除により死亡率減少効果が証明されている。

 

しかし大腸がん検診で便潜血陽性になっても、精密検査であるTCSを受ける者が十分でないため大腸癌をなかなか制圧できないでいる。

 

そしてこのTCSに進まない理由として、適当な施設が近くにない、症状がない、時間がない、痔からの出血だと思うなどの理由とともに、TCSが大変で苦しいという理由も大きく影響している。

 

また医療側も挿入技術が難しい、リスクが高いなどを理由に検査を勧めない場合もあり、被検者と医療側の双方からTCSがハードルの高い検査になってしまっている。

 

医療側は、被検者が満足する検査を行う義務があるが、そのためには事前になぜこの検査が必要であるかや検査のリスクとベネフィットなどを説明し同意を受けなければならない。

 

また配慮すべき項目は、なるべく楽な検査前準備、苦しくないTCS、快適な施設環境、スタッフの心配り、検査後の休息、検査の説明、帰宅後の注意など多岐に及ぶため、TCS後に被検者にアンケートを取ることは被検者にとってTCSが満足な検査であったかを知る上で重要な術となる。

 

TCSはリスクが高い検査である。

 

検査前処置だけでも死亡率の報告があり、検査中も迷走神経反射などのバイタルの変動や穿孔のリスクが付きまとう。

 

これらのことを肝に銘じ、また患者さんの大腸癌死亡リスク減少のためにスコープを操作していることを常に考えながら検査に臨まなければならない。

 

そのための患者さんへの配慮やスタッフへの感謝、挿入技術の向上はつねに努力を惜しまないようにしなければならない。

 

ところで、二木会が提唱しているTCSの心構えは、「1.安全」「2.快適」「3.正確」「4.確実」「5.短時間の挿入」である(Fig.1)。

Fig.1 二木会が提唱するTCSの心構え①.

 

この中でもっとも大切なことは安全な検査であり、患者さんの状態が悪くなったり挿入が極めて困難となった場合はちゅうちょなく検査を中断するべきである。

 

そして安全な検査が担保されて初めて、次の快適な検査、正確な観察、確実に回盲部までスコープを挿入することを求めることができる。

 

そして、この安全、快適、正確、確実な検査ができるようになった者が目指せるのが迅速な検査である(Fig.2)。

Fig.2 二木会が提唱するTCSの心構え②.

 

被検者に満足なTCSがどのくらい提供できたのかが技術を図る指標であり、盲腸到達率や挿入時間、ADRなどは検者の上達の目安と考えるが、それを一番の目標に挙げて患者さんのことを考えないTCSは行ってはならない(Fig.3)。

Fig.3 二木会会員の最初の目標と技術を図る指標.

 

またTCSには、まず検査前処置というハードルがある。

 

準備をどこで行うか、どのような準備を行うかなどは各施設の特性もあり、一概にどれが良いとは決められない。

 

著者のクリニック(ムラタ胃腸内視鏡クリニック)では、検査前日の検査食、前日の下剤、在宅での腸管洗浄を基本に行っているが、なかなか前処置ができない患者さんもいらっしゃり、検査後のアンケート調査では検査前準備が大変(8%)もしくは少し大変(55%)とという方で半数を超えてしまう(Fig.4)。

Fig.4 検査前準備のアンケート結果(ムラタ胃腸内視鏡クリニック).

 

この点は改良の余地が多い。

 

ムラタ胃腸内視鏡クリニックでのTCS(Fig.5)の流れは、更衣室を兼ねているリカバリールームでアナムネ聴取、ライン確保後にストレッチャーで検査室に移動、バイタル測定後に酸素飽和度をモニターしつつsedation(塩酸ペチジン®、ドルミカム®)を行い、炭酸ガス送気にて挿入を行う。

Fig.5 ムラタ胃腸内視鏡クリニックでのTCS.血圧・酸素飽和度をモニター,セデーション(鎮静)を行い,炭酸ガス送気にて検査を行う.

 

送気は直腸挿入時に行ったあとは、無送気、送水にて下行結腸まで挿入し、その後送気を開始し回盲部に挿入する(詳細は別章)。

 

挿入時間は5分を目標にしており、挿入率はほぼ100%、検査後のアンケート調査で検査が苦しかったと答えた方は2%にも満たない(Fig.6)。

Fig.6 検査快適度のアンケート結果(ムラタ胃腸内視鏡クリニック).

 

ところで、初心者がTCSの挿入法を学ぶ上で最も重要なのは自分の挿入のパターンを作り上げることである。

 

そのためには上級医の挿入を見ることが大切であり、それを踏まえて自身の挿入を確立する。

 

目標は、まず盲腸までの挿入時間10分、挿入到達率90%以上を目指すようにする。

 

今回の「gastropedia」とのコラボで、今後どのように自身の挿入のパターンを身に着けていくかなどを解説していく予定である。

 

 

 
二木会 勉強会 のお知らせ
二木会では大腸内視鏡挿入法の勉強会を行っています。
挿入法についての疑問やご質問等がありましたら、是非ご参加下さい。
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また「二木会を自分のところでも」 とお考えの先生は、開催予定のない日であれば実施可能ですので、お気軽にご相談下さい。
※参加申し込みなどの「お問合せ」は、以下の「二木会 TOPページ(https://nikikai.wixsite.com/nikikai)」をご覧ください。 
 

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