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【深達度診断】
肉眼型別に見ていく。
(1)0-I型(Fig.7)
組織型の大半は分化型である。
隆起型では、大きさが深達度と相関する。
2cm以下で有茎性のものはM癌がほとんどであるが、2cm以上で無茎性・広基性,SMT様の立ち上がり、基部に周囲から粘膜ひだの引き込みがあること、周囲の粘膜ひだの肥厚、強い発赤・びらんや結節状の凹凸不整、深い陥凹面や崩れなどの所見が見られた場合は、SM浸潤を示唆する。
3cm以上ではSM癌の頻度が80%を占めるため、注意が必要である11)。
空気少量で壁の硬化像や腫瘍の基部にゆるやかな立ち上がりを認める場合は、進行癌(MP以深)を疑う。
Fig.7 胃体下部大彎の0−1型早期胃癌の症例
境界明瞭な丈の高い隆起性病変で、表面は不整である。
(2)0-Ⅱa型(Fig.8)
分化型癌が主体でM癌がほとんどであるが、病変が 4cmを超えるとSM癌が認められてくるようになる。顆粒状隆起の表面が凹凸不整、あるいは陥凹を伴う病変ではSM浸潤を疑う12)。
Fig.8 前庭部前壁に分葉傾向のある褪色と発赤が混在した0-IIa型を認める。一部に丈が高い部位がみられ,腺腫ではなく早期胃癌を疑う。
(3)0-Ⅱa+Ⅱc型
SM以深の場合が多い。
これが進行すると、2型進行癌を呈すると考えられる。
病変が 2cm以上の場合、SMT様の立ち上がりを有する場合はSM massive以深を考える。
一方、隆起の立ち上がりが急峻な場合や陥凹底が比較的均一で、病変に厚みを伴わない場合は、成分が優位なもの、0-Ⅱc型に類似したびらん型の病変はM癌を考える。
(4)0-Ⅱc型
①分化型癌(Fig.9~11)
発赤調を呈することが多い。
主に萎縮の目立つ腸上皮化生粘膜を背景に発生し、周囲の粘膜と段差のある浅い陥凹であり、病変の辺縁は内に凸、不整で、いわゆる蚕食像を呈する。
しばしば周囲にひげ状の伸び出しを伴う(Fig.9)。
M癌では陥凹底は均一な発赤調で、平滑あるいは顆粒状である(Fig.10)。
周囲には反応性の隆起を伴うことが多いが、表層のアレア構造は残っており、隆起の幅は狭い。
ULを伴うもの(Fig.11) では粘膜ひだの集中像を認めるが、ひだは陥凹辺縁でなめらかにやせ、陥凹内の1~数点に集中する。
SMに浸潤すると、陥凹周囲が健常粘膜に覆われたまま、幅を持って全周性に隆起することが多い。
Fig.9 胃体下部前壁大彎寄りに境界明瞭な不整形の発赤陥凹性病変を認める。分化型癌の特徴として、ひげ状の伸び出しが認められる。
Fig.10
a.境界明瞭な陥凹である。
b.均一な発赤である。
c.内に凸の陥凹辺縁で、辺縁は不整(蚕蝕像)でひげ状の伸び出しもみられる。
Fig.11 0-IIc(UL+)型分化型
インジゴカルミンを撒布すると、不整な陥凹が明瞭となる。
②未分化型癌(Fig.12、13)
褪色調を呈する境界明瞭な不整型陥凹性病変として認識される。
胃底腺粘膜、あるいは萎縮移行帯付近に好発し、周囲の粘膜との段差は明瞭で断崖状となることが多い。
陥凹縁は不整で蚕食像を呈する。
M癌では褪色調の陥凹底に発赤調の再生顆粒が散在する(Fig.12)。
ULを伴うものが多いが、集中ひだは陥凹の辺縁で途絶する(Fig.13)。
SMに深く浸潤すると、集中する粘膜ひだ先端が陥凹辺縁で棍棒状、ばち状に肥大したり、融合することが多い。
また、送気して胃壁を十分伸展すると浸潤した癌の厚みによって出現する台状挙上所見がみられることもある。
Fig.12 0-Ⅱc(UL-)型未分化型早期癌
胃底腺領域に存在する境界明瞭な褪色陥凹として認識される。
Fig.13 0-Ⅱc(UL+)型未分化型早期癌
a、b 胃固有腺領域に存在する境界明瞭な褪色陥凹性病変。
c、d インジゴ撒布にてひだ集中が明瞭化した。
0-IIc型でSM浸潤を示唆する所見として、
①陥凹面の色調(顕著な発赤)(Fig.14)
②陥凹部の厚み(Fig. 15),深い陥凹(Fig.16)
③壁の硬化像(Fig.17)
④病変の大きさ > 2cm
⑤集中する粘膜ひだ先端の腫大・融合(Fig.18)
⑥辺縁の隆起・台状挙上、陥凹面の硬化像:陥凹周囲に立ち上がりが健常粘膜に覆われた幅の広い周堤様隆起を認める (Fig19, 20)。
立ち上がりがなだらかかどうか、粘膜下に腫瘍の塊があって形成された隆起なのかどうかに着目。
亜有茎性はSMT様の立ち上がりではない。
⑦陥凹面の構造(大小不同の結節・粘膜模様の無構造化,大きな結節の存在、SMT様に立ち上がる陥凹内隆起)などが挙げられる(Fig.21)。
Fig.14 0-Ⅱc型 分化型SM浸潤癌
a.陥凹辺縁は棘状を呈し,周囲には反応性の隆起を伴う。
b.陥凹面は強い発赤調を呈し,一部びらん化している。
Fig.15 0-Ⅱc型 未分化型SM浸潤癌
陥凹部は厚みを伴い、病変口側の周囲隆起は粘膜下腫瘍様に立ち上がっている。
Fig.16 0-Ⅱc型 未分化型SM浸潤癌
前庭部大彎に20mm大の深い不整形の陥凹性病変を認める。周囲粘膜は粘膜下腫瘍様に隆起している。
Fig.17 0-Ⅱc型 分化型SM浸潤癌
空気進展させるとよく伸びる病変だが、側面からの観察では直線化の所見を認める。脱気すると硬さが目立つ。
Fig.18 0-IIc型 未分化型SM浸潤癌
胃角部小彎に褪色調の不整形陥凹性病変を認める。
陥凹内には発赤調の再生上皮が散見される。
一部に断崖状の辺縁を認める。
周囲より集中するひだは腫大・融合している。
Fig.19 0-IIc型 未分化型SM浸潤癌
陥凹内の大部分が発赤調の再生上皮に覆わている。
陥凹辺縁には、なだらかに立ち上がる健常粘膜に覆われた周堤様隆起がみられる。
Fig.20 0-IIc型 未分化型SM浸潤癌
陥凹辺縁には立ち上がりがなだらかな健常粘膜に覆われた粘膜下腫瘍様隆起がみられる。
Fig.21 0-IIc型 分化型SM浸潤癌
陥凹内に立ち上がりがなだらかな結節状隆起を認める。
(5)0-Ⅱc+Ⅲ型,0-Ⅲ+Ⅱc型,0-Ⅲ型(Fig.22, 23)
悪性サイクルで, Ⅲ型(Fig.22)は0-Ⅲ+Ⅱc型(Fig.23)→0-Ⅱc+Ⅲ型を経て、UL(+)0-Ⅱc型になる。
消化性潰瘍部分(Ⅲ)が小さい0-Ⅱc+Ⅲ型はUL(+)Ⅱc型に準じて診断は容易である。
しかし、Ⅲ部分が多い0-Ⅲ型、0-Ⅲ+Ⅱc型では潰瘍に伴う浮腫と癌浸潤の鑑別は困難であり、深達度診断は難しい。
Fig.22 0-Ⅲ型
胃体下部小彎に潰瘍性病変を認める。潰瘍の形、再生発赤の幅、再生発赤の分布が不整である。
Fig.23 0-Ⅲ+Ⅱc型
潰瘍周囲に不整形の境界明瞭な発赤陥凹を認める。