腸壁は一般的に、腸管エコー(intestinal ultrasound: IUS)で5層の構造として表示されます(Fig.1)。
② 粘膜層を表す低エコー(暗い)層
(高周波プローブでは粘膜固有層、粘膜筋板が分離して描出されます)
③ 粘膜下層を表す高エコー層
④ 固有筋層を表す低エコー層
(高周波プローブでは内輪筋、外縦筋が分離して描出されます)
⑤ 漿膜を表す高エコー層
腸壁は一般的に、腸管エコー(intestinal ultrasound: IUS)で5層の構造として表示されます(Fig.1)。
Fig.1 腸管の層構造.
a:S状結腸の腸管エコー像 6MHz コンベックスプローブで撮像。内腔から境界の高エコー、粘膜層の低エコー、粘膜下層の高エコー、固有筋層の低エコー、漿膜とその境界の高エコーの5層が描出される。
b:水深下でクローン病の切除した小腸を10MHzで観察。周波数が高い場合にはさらに、内腔の粘膜層は粘膜固有層と粘膜筋板に、筋層は輪走筋、縦走筋が分離して描出される。
〔佐上晋太郎,他.炎症性腸疾患における腸管エコー.胃と腸 59:1435-1444,2025より一部改変して転載〕
以下に、IBDの重症度に相関してみられるIUSのパラメーターについて紹介します(Fig.2)。
Fig.2 IBD腸管エコーにおける評価項目.
UC: ulcerative colitis, CD:Crohn’s disease.
〔佐上晋太郎,他.炎症性腸疾患における腸管エコー.胃と腸 59:1435-1444,2025より一部改変して転載〕
■ 腸管壁厚(bowel wall thickness:BWT)
上記のうち3層(②〜④)を測定します。BWT3mm以上の場合、炎症があると診断します。直腸における診断精度は低いことに注意が必要です。
■ 腸壁血流多寡
Modified Limberg score(腸管内にシグナルがないとき:スコア0、点状シグナル:スコア1、線状のシグナル:スコア2、腸管外まで伸展した場合:スコア3)が頻用され、半定量的に評価されます1, 2)。 BWT3mm以上かつカラードプラ信号を腸壁内に認めた場合、炎症があると診断します。プローブの周波数やゲインの設定に影響を受けることに留意します。
■ 腸壁層構造の消失
BWT3mm以上かつ層構造が不明瞭もしくは喪失した場合には、炎症があると診断します。
■ 炎症性脂肪(iFat)
特にクローン病で有用な所見です。炎症がある場合にのみみられる所見のため、最重症部位で評価されるべきとされています3, 4)。
■ リンパ節の腫脹
炎症があるときにみられます。当院では短径5mm以上を有意な所見として利用していますが、年齢や部位によっても変化するため、炎症を評価する際の適切なカットオフ値についてはコンセンサスが得られていません。
■ ハウストラ(ひだ)の消失
右側結腸と左側結腸ではハウストラの高さが異なり、所見の陽性率が異なる可能性があるため、注意が必要です。
それぞれのパラメーターは、検査者間の一致率が異なります。
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)では、BWTはほぼ完全であり(級内相関係数、ICC: 0.96)、腸壁血流多寡もかなり高く(κ=0.63)、リンパ節の腫脹の有無は中程度(κ=0.41)、iFatの存在(κ=0.36)、腸壁層構造の消失(κ=0.24)、ハウストラの消失(κ=0.26)については低いです。
Crohn病 (Crohn’s disease:CD)でも、BWTはほぼ完全です(CC:0.96) 3)。腸壁血流の多寡、腸壁層構造の消失、iFatの存在については、陽性的中度が高い所見であるため重要ですが、検者間や装置間の一致率が低いことに注意が必要です。
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