■治療効果のモニタリング
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)では、症状の軽快とともに腸管エコー(intestinal ultrasound: IUS)所見は改善します 1)。経会陰超音波検査(transperineal ultrasonography : TPUS)は、UCにおける症状の改善を予測するツールとして提案されており、直腸の腸管壁厚(bowel wall thickness:BWT)の変化を測定することで予測が可能です。
寛解導入療法の最初の1週間での直腸BWTの早期改善は、先進的治療後のUCにおける組織学的寛解を確実に予測します 2)。一方で、治療開始6週目でのBWTと腸壁血流の多寡は、治療フォローアップ(8~26週)での内視鏡的寛解と改善を予測できます 3)。
炎症の重症度を評価するMilan Ultrasound Criteria(MUC)は治療効果の予測や再燃予測にも有用です〔MUC=1.4×BWT (mm) +(血流なし 0、血流あり2)〕。MUC≦6.2がMayo内視鏡サブスコア(Mayo endoscopic subscore :MES)0, 1を予測する唯一の独立因子であることが明らかになっています。当院でも、治療14週後のIUSでMUCが改善(MUC 3.8)した症例では、24週後に内視鏡的粘膜治癒を達成しました(Fig.1)。

Fig.1 潰瘍性大腸炎におけるモニタリング.
下行結腸とs状結腸の腸管エコーと大腸鏡所見の変化.
BWT: bowel wall thickness(正常は3mm以下)、 MUC: Milan ultrasound Criteria (正常は6.2以下).
■寛解期のモニタリング
UCの臨床的寛解の患者においても、MUC〔MUC=1.4×BWT (mm) +(血流なし 0、血流あり2)〕が6.2を超えると再燃リスクが高いことが示されており、MES≧1および便中カルプロテクチン(fecal calprotectin:FC)≧250μg/gが再燃リスクを高めることを、筆者らは報告しています 4)。
また、寛解期における細菌性腸炎などの感染性腸炎で再燃と判断に悩む際にも、IUSは有用な可能性があります。当院でも、急性下痢、発熱を訴えた患者にIUSを施行し、右側結腸優位の炎症所見と病歴から細菌性腸炎と診断しました。便培養ではCampylobacter jejuniを認めました(Fig.2)。

Fig.2 UCに合併した感染性腸炎(Campylobacter jejuni ).
シェーマのように右側結腸優位の壁肥厚、血流多寡を認める。急性の下痢の増悪、発熱、CRP上昇(13.6mg/dL)に加えて、腸管エコー所見で右側結腸優位の炎症所見であったことから細菌性腸炎と診断した。便培養からはCampylobacter jejuniが検出された。
文献
1) Maaser C, et al. Intestinal ultrasound for monitoring therapeutic response in patients with ulcerative colitis: Results from the TRUST&UC study. Gut. 2020;69(9):1629-36.
2) Sagami S, et al. 1080 EARLY TRANSPERINEAL ULTRASONOGRAPHY AS A PREDICTOR OF HISTOLOGICAL REMISSION IN ULCERATIVE COLITIS FOLLOWING ADVANCED THERAPY. Gastroenterology. 2024;166(5):S-256.
3) De Voogd FA, et al. Early Intestinal Ultrasound Predicts Clinical and Endoscopic Treatment Response and Demonstrates Drug-Specific Kinetics in Moderate-to-Severe Ulcerative Colitis. Inflammatory bowel diseases. 2024 Nov 4;30(11):1992-2003.
4) Maeda M, et al. Milan Ultrasound Criteria Predict Relapse of Ulcerative Colitis in Remission. Inflamm Intest Dis. 2023;8(3):95-104.
炎症性腸疾患 関連書のご紹介 好評発売中です!
『胃と腸』 Vol.59 No.10 2024年 10月号(増大号)
炎症性腸疾患のすべてがわかる!-病態から診断、画像所見、内科治療、外科治療、長期経過までー
AIの応用、新たな内視鏡治療など、最新知見も網羅。


『胃と腸』 Vol.60 No.7 2025年 7月号 ★最新号
炎症性腸疾患関連腫瘍の早期発見や内視鏡的切除の可否、Crohn病でのサーベイランスの在り方など、
診断・治療の現状と課題を最新知見をもとに考察する。


お近くの医学書取り扱い書店でお求めください!
◎お近くの取り扱い書店はこちら
◎弊社雑誌HPはこちら