胃粘膜下腫瘍  水谷 勝(東京都がん検診センター消化器内科)

【概念・概略】

粘膜下腫瘍(submucosal tumor;SMT)とは、「主病変が周囲粘膜と同様の粘膜に覆われ、半球状または球状に消化管内に突出した病変の総称」と考えられている1)

 

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【分類・鑑別】

非上皮性腫瘍としては、間葉系腫瘍〔消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor ;GIST Fig.12)、平滑筋腫や平滑筋肉腫(Fig.3)、神経原性腫瘍など〕、血管原性腫瘍(血管腫、グロームス腫瘍、血管肉腫、Kaposi肉腫など)、脂肪腫、脂肪肉腫・悪性リンパ腫・悪性黒色腫などがある。

 Fig1a

Fig.1  胃外発育型GIST

a X線造影像。胃角小彎になだらかな圧排を認める。

 

Fig1b

Fig.1  胃外発育型GIST

b 内視鏡像。胃角小彎をまたぐ、なだらかな隆起を認める。

 

Fig1c

Fig.1  胃外発育型GIST

c EUS(endoscopic ultrasonography)像。壁外性の充実性の低エコー腫瘤を認める。

 

Fig1d

Fig.1  胃外発育型GIST

d EUS像.腫瘤は胃壁の第4層(固有筋層)に接している。

 

Fig1e

Fig.1  胃外発育型GIST

e マクロ像。充実性の腫瘤の像である。

 

 

 

Fig2a

Fig.2 胃内発育型GIST(delle〔中心陥凹〕を伴う)

a X線造影像。胃体下部後壁に頂部に濃いバリウム斑を伴うSMTを認める。

 

Fig2b

Fig.2 胃内発育型GIST(delle〔中心陥凹〕を伴う)

b 内視鏡像。胃体下部後壁に正常粘膜に覆われたSMTを認める。

 

Fig2c

Fig.2 胃内発育型GIST(delle〔中心陥凹〕を伴う)

c EUS像。頂部の深い陥凹が明瞭に描出されている。

 

Fig2d

Fig.2 胃内発育型GIST(delle〔中心陥凹〕を伴う)

d 造影CT像。造影効果を示す陥凹を伴う腫瘤が認められる。

 

Fig2e

Fig.2 胃内発育型GIST(delle〔中心陥凹〕を伴う)

e マクロ像。頂部に潰瘍を伴う充実性の腫瘤の像である。

 

 

 

Fig3a

Fig.3平滑筋肉腫

a 内視鏡像.胃体上部後壁寄りの大弯に深い陥凹を伴う平滑な隆起を認める。

 

Fig3b

Fig.3平滑筋肉腫

b マクロ像。内部には深い陥凹を伴う充実性の腫瘍を認める。

 

Fig3c

Fig.3平滑筋肉腫

c ミクロ像。MIB-1 indexは50%と高値を示す。

 

〔画像は厚生中央病院内科・本間俊裕先生のご厚意による〕

 

 

 

非腫瘍性病変としては、異所性膵(迷入膵)(Fig.4)、炎症性線維性ポリープ(Fig.5)、粘膜下層の異所性腺管・嚢腫などがある。

 

 Fig4a

Fig.4 異所性膵(迷入膵)

a X線造影像。幽門前部大弯にニッシェ(導管)を認める。

 

Fig4b

Fig.4 異所性膵(迷入膵)

b 内視鏡像。幽門前部大弯に頂部に陥凹を伴うSMTを認める。

 

Fig4c

Fig.4 異所性膵(迷入膵)

c マクロ像。胃癌合併のため切除。幽門前部に頂部に陥凹を伴うSMTを認める。

 

  

 

Fig5a

Fig.5 炎症性線維性ポリープ 

a X線造影像。幽門前部前壁寄りの小彎に頂部に小陥凹を伴う平滑な隆起を認める。

 

Fig5b

Fig.5 炎症性線維性ポリープ 

b 内視鏡像。幽門前部前壁寄りの小彎に正常粘膜に覆われた隆起を認める。

 

Fig5c

Fig.5 炎症性線維性ポリープ 

c マクロ像。隆起の頂部には溝状の陥凹を伴う。

 

 

胃SMTで最も頻度が高いのはGISTである。

 

 

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HE染色の組織像がGISTとして矛盾がなく、免疫染色でKITあるいはCD34が陽性であればGISTと診断する(Fig.62) 

がん診療ガイドライン―GIST診断アルゴリズム(7. 病理組織診断 免疫染色による主な消化管間葉系腫瘍の鑑別)をご確認ください。 http://www.jsco-cpg.jp/item/03/algo.html#gist_algo_7

Fig.6  病理組織診断:免疫染色による主な消化管間葉系腫瘍の鑑別

 

 

GISTに関しては、腫瘍径と核分裂像数に基づいてリスク分類(Table1)がなされる。

Table1

Table1 GISTのリスク分類(Fletcher分類)3)

 

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【症状】

大部分は無症状であり、検診などを契機に発見されることが多い。時に消化管出血や貧血を認める場合もある。

 

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1.X線造影所見

 

隆起の表面は平滑、辺縁はなだらかな立ち上がりを呈する。

隆起の周囲から隆起に向かって橋が掛かるように見られる粘膜ひだを“架橋ひだ(bridging fold)”と呼び、SMTに特徴的な所見である4)

隆起の頂上に臍状に認められる陥凹をdelle(中心陥凹)と呼ぶ。

 

2.内視鏡所見

隆起は周囲と同様の正常粘膜で覆われ、なだらかな立ち上がりを呈する。

色調や陥凹(潰瘍)の有無に注意する。

鉗子により可動性や硬さを見る。

 

3.超音波内視鏡(EUS)

SMTの診断に必須である。

胃壁との連続性を見ることで、その発生由来や病変の主座を知ることができるとともに、腫瘍内部のエコー像から確定診断に迫ることができる。

胃外性圧排との鑑別に重要である。

 

4.CT・MRI所見

飲水あるいは発泡剤などで胃を伸展させた状態で撮影する。

経静脈性造影剤を用いると、造影効果を根拠に診断に迫ることができる。

周囲臓器との関係、転移の有無を調べるために必要である。

 

5.生検診断

ボーリング生検、粘膜切開後に腫瘍を露出して生検する方法がある。

専用の内視鏡装置と熟練した手技が必要なため施行できる施設は限られるが、EUS-FNAB(fine needle aspiration biopsy)は確実に組織を採取できる有用な方法である。

 

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胃壁外からの圧排所見を鑑別する必要がある。

 

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【治療】

GIST治療の第一選択は外科治療である(Fig.72)

がん診療ガイドライン―GIST診断アルゴリズム(7. 病理組織診断 免疫染色による主な消化管間葉系腫瘍の鑑別)をご確認ください。 http://www.jsco-cpg.jp/item/03/algo.html#gist_algo_1

Fig.7 SMTの治療方針

 

手術で切除不能な場合は、イマチニブを主軸とした内科治療が行われる(Fig.82)

がん診療ガイドライン―GIST診断アルゴリズム(7. 病理組織診断 免疫染色による主な消化管間葉系腫瘍の鑑別)をご確認ください。 http://www.jsco-cpg.jp/item/03/algo.html#gist_algo_3

Fig.8 内科治療

 

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GIST根治手術後症例に対しては、リスク分類に応じてCTによるフォローが必要である(Fig.92) 。 

がん診療ガイドライン―GIST診断アルゴリズム(7. 病理組織診断 免疫染色による主な消化管間葉系腫瘍の鑑別)をご確認ください。 http://www.jsco-cpg.jp/item/03/algo.html#gist_algo_2

Fig.9 外科治療

 

再発治療に関しては手術適応のある場合は切除を、手術適応がない場合はイマチニブを用いた治療が選択される(Fig.102)。 

がん診療ガイドライン―GIST診断アルゴリズム(7. 病理組織診断 免疫染色による主な消化管間葉系腫瘍の鑑別)をご確認ください。 http://www.jsco-cpg.jp/item/03/algo.html#gist_algo_4 

Fig.10 内科治療

 

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【予後】

最大腫瘍径と核分裂像数、部位、腫瘍被膜破裂の有無を指標として作成されたContour mapsが再発頻度判定に有用とされている2)

出血性食道炎はPPI投与にて対応できることがほとんどである。

 

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