One Point Summary
大腸癌の新たな発生経路である serrated pathway に注目し、その前駆病変である SSL(sessile serrated lesions)の内視鏡治療の現状と課題を概説。SSLの切除は癌予防に有効とされている。ただし、治療適応や手技、術後サーベイランスに関するエビデンスが不十分でガイドラインは未統一である。診断には多様な所見の総合判断が必要であり、浦岡先生らはSSLと診断された時点で積極的な内視鏡切除を推奨している(2025年2月時点)。
Dr. 松田’s ポイント!
- 大腸鋸歯状病変の中で、SSLの割合は増加している。
- 本邦では10mm以上のSSLの切除が提案されているが、欧米では直腸以外のSSLは大きさにかかわらず内視鏡切除が推奨されている。
- 筆者は、SSLと診断した時点で積極的な切除を推奨している。
- SSLで20mm以上や悪性所見が疑われる場合は一括切除が望ましい。
- SSLに対するcold polypectomyは許容される。
Dr. 松田's コメント!
- 遺伝性大腸癌診療ガイドラインによると、大腸癌全体に対する高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の割合は、欧米の報告では12~16%であるが、わが国の報告では6~7%と低い。実際に臨床現場で大腸癌の遺伝子検査を行っても、MSI-Hの結果になることが非常に少ないと感じる(これは外科医側が、化学療法を行うにあたって免疫チェックポイント阻害薬が使えるMSI-Hという結果であってほしいと思うことと関係するかもしれない)。
- 外科医はMSI-H大腸癌の術後補助化学療法にフッ化ピリミジンを使わないこと、あるいはMSI-Hの切除不能進行・再発癌の場合に免疫チェックポイント阻害薬が用いられること、encorafenibやbinimetinib はBRAFV600E遺伝子変異型のみに適応されることを知っていても、MSI-H大腸癌やBRAF変異型大腸癌の成り立ちについてはあまり興味を持っていない(自省をこめて)。
- その点、『胃と腸』では鋸歯状病変に焦点をあてて、詳細に述べられており、読者の知識は豊富であろうと思われる。外科医も是非、本誌を通じて鋸歯状病変の知見を深め、MSI-H大腸癌やBRAF遺伝子変異型大腸癌の治療現場で活かしていただきたい。
【関連論文:Dr. 松田’s セレクト】
●Kagemoto K, et al. Clinicopathological evaluation of the efficacy of endoscopic treatment for sessile serrated lesions comparing endoscopic mucosal resection, cold snare polypectomy, and underwater endoscopic mucosal resection. DEN Open 5(1),e70051, 2025
●Hiramatsu Y, et al. Rapid Progression of a Sessile Serrated Lesion. Internal Medicine 63(23) : 3255-3256, 2024
●鍋山 健太郎, 他. 内視鏡的に経過観察しえたSessile serrated lesion由来リンパ管侵襲陽性T1b癌の1例. Gastroenterological Endoscopy 67(5) : 1090-1096, 2025
【本論文掲載号】
「胃と腸」60巻2号(2025年2月号)大腸鋸歯状病変を見直す
《主題》「大腸鋸歯状病変に対する内視鏡治療の進歩」 浦岡 俊夫,他(pp.182-189)

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【連載トップページ】
① Dr. 松田’s セレクト! 60巻2号浦岡論文 「大腸鋸歯状病変に対する内視鏡治療の進歩」
② Dr. 松田’s セレクト! 59巻7号豊福論文「Idiopathic myointimal hyperplasia of the mesenteric vein(IMHMV)による狭窄型虚血性大腸炎の1例(二次出版論文)」
③ Dr. 松田’s セレクト! 59巻7号小林論文「壊死型虚血性腸炎の臨床像 - NOMIを含めて」